黒崎そごう出店経緯
元々「そごう」は「小倉そごう」出店計画が先にあったため、「黒崎そごう」出店に関しては、一度正式に断っている。しかし、北九州市をはじめ、地元側から『八幡西区の黒崎に出店をするなら、小倉そごう出店にも協力する』と言われ、出店に踏み切った。これを一例とし「そごう」は、地方自治体の再開発事業に協力する形で歯止めの利かない多店舗化の歴史を歩み始めて行くことになる。
黒崎そごうは、北九州市の国鉄黒崎駅前に建設された黒崎再開発ビル(加筆:メイト黒崎ビル)の核店舗として、1979年10月6日開店した。黒崎再開発ビルは、北九州市の副都心黒崎駅前の近代化をはかるため、都市再開発法に基づいて、黒崎駅東地区市街地再開発組合が施工したビルである。「株式会社そごう」は、再度にわたり、このビルの核店舗として出店要請を受け、1975年9月に出店表明、1977年10月に資本金1億円の「株式会社黒崎そごう」を設立した。その後、1979年3月、増資により資本金を3億円とした。(加筆:のち7億5千万円に再増資)黒崎再開発ビルは、1978年6月起工、翌1979年9月竣工した。建物は、一部地下1階地上7階、総面積は98,195平米で九州最大を誇り、建物の東西の全長236mは日本一の長さである。(加筆:いずれも当時)ビルには、黒崎そごうのほか、ジャスコ黒崎店、メイト専門店街が入居し、さらに公共施設、クリニックなどが配され、そごうとしては初めての入居形態である。黒崎そごうの誕生によって、そごうは、北海道から九州にいたる日本列島四島を縦断するわが国初の百貨店網を実現したのである。
(株式会社そごう小史より)
黒崎駅東地区再開発ビル(メイト黒崎ビル)建物概要 |
◎名 称 黒崎駅東地区再開発ビル(メイト黒崎ビル)
◎建築主 黒崎駅東地区市街地再開発組合
◎設 計 石本建築事務所
◎施 工 大成建設九州支店
◎敷地面積 20,747.05㎡
◎建築面積 15,228.62㎡
◎延床面積 98,195.28㎡
◎建ぺい率 73.4%
◎容積率 416.6%
◎構 造 鉄骨 / 鉄筋コンクリート造
◎主外装 プレキャストコンクリート吹付タイル仕上
◎階 数 地上7階 / 塔屋3階
◎各部の高さ 建築物の高さ31.70m / 塔屋までの高さ42.55m / 軒髙31.00m
◎用途・防火地域 店舗 / 防火
◎駐車場施設 収容台数363台以上
◎エレベーター
乗用7基(3基27人用120m/分、2基14人用90m/分、1基11人用60m/分、1基9人用60m/分)
人荷用4基(3基1,500kg90m/分、1基1,500kg60m/分)
荷物用3基(1基2,500kg90m/分、1基2,000kg90m/分、1基1,500kg60m/分)
◎エスカレーター
屋内用 幅1,200mm(UP・DN)24台
屋外用 幅1,200mm(UP・DN)2台(全天候型)
建設の記録 |
建設コストを軽減
黒崎そごうの建設コストは、従来のそごう店舗の中で最も安かった(当時)。長期的展望に立ち、回収期間(黒字化)が永くなることを想定。約2割のコストダウンを達成した。多面的な検討の末、地下階を造らなかった理由のひとつもそこにある。もっとも、黒崎の地下は川が流れていることもあり、造れば通常の倍の経費がかかり、地下鉄の無い地下階は、それほどの意味を持たないと判断された。
黒崎そごうオープンにあたって(プレスリリース) |
マスコミ用資料挨拶文(1979年8月27日)
10月3日(水)そごうグループ10番目の店 黒崎そごうを開業させていただく運びとなりました。黒崎そごうは九州最大の都市 北九州市の副都心の形成という地元関係者の永年にわたる願いを実現する核店舗として開設されます。新しい街づくりを願う多くの人々の期待に応え核店舗としての役割を果たすためにも地域一番のサービス、地域一番の信用、地域一番のグレードをその内容とした店づくりを進めます。知名度ゼロからの出発というキビシイ現状認識のもとに、より謙虚な姿勢、ヴィヴィッドな感覚、強固なチームワーク、あふれる行動力で本当に消費者に喜ばれる店づくりを心がけてまいります。特にサービスの基本は「親切」と「感謝」とし、ニコニコ・ハキハキ・キビキビとした行動を全員が実行します。どうか末永く格別のご指導と、ご愛顧を賜りますよう心からお願い申し上げます。
※大店審による営業許可日は10月1日(10月3日開業・10月6日開店)
黒崎そごう開店半年前に配布されたプレス用パンフレット(1979年春・A4・2色刷り)
初期のパース画使用(塔屋の“そごう”ロゴは当初計画に無かった)
新聞特集「躍進するそごうグループ」
(1979年10月3日・朝日新聞西部本社版・全5段)
そごうのあゆみ「黒崎そごうは十店目」
(1979年10月3日・朝日新聞西部本社版)
ストアコンセプトの変遷
「黒崎そごう」オープン時は、中央百貨店「そごう」の九州上陸第1号としてのイメージ付けもあり、売上競争のためのマークダウン厳禁で『本格的都市型百貨店』を構築することが至上命令であった。その後、地域経済の鈍化傾向、「小倉そごう」オープンによる商圏縮小に伴い『ファミリーで楽しめる地域密着型百貨店』としてストアコンセプトを再構築した。
社内研修用記録映画 |
◎映画名:九州のシンボル 宇宙戦艦 黒崎そごう誕生〈建設の記録〉
◎企 画:株式会社黒崎そごう
◎製 作:株式会社そごう総合事業部
◎1979年製作・35分
※ナレーターは右手和子さん(懐かしのTVアニメ「悟空の大冒険」悟空役の声優さんです)
◆映画に出てくる沿革一覧
◎1978年06月01日 起工式
◎1978年11月01日 黒崎そごう第1期生入社試験(応募約500名)
◎1978年12月06日 水島社長・山田専務現地視察
◎1979年04月01日 黒崎そごう第1期生入社式(安川電機体育館)・ 店花ダリアの種を付けた風船・合宿研修(葛城高原ロッジ・県立英彦山青年の家)
◎1979年04月27日 上棟式・祝賀会
◎1979年08月17日 黒崎そごう第1期生グループ店研修より帰店・千葉・神戸・広島・いよてつ (4ヵ月間研修)
◎1979年08月18日 下期人事異動に伴い第2次幹部社員到着
◎1979年09月06日 水島社長・山田専務最後の現地遵守・幹部社員集会(ホテルサンルート黒崎)
◎1979年09月03日 訪問キャンペーンスタート・2週間:30万世帯・1人1日100件
◎1979年09月11日 エスカレーター付き横断歩道設置(国道3号線)
◎1979年10月02日 節理の滝始動式・光の樹点灯式(水島社長)・伏見稲荷奉鎮祭(屋上)・労使共催開店祝賀前夜祭(屋上)
◎1979年10月03日 竣工式・竣工開店披露宴(1,100名)
■司会:山口崇・藤田弓子
■来賓:中山素平 日本興業銀行相談役・瀬川美能留 野村證券相談役・今里廣記 海外石油開発会長
■ゲスト:池坊専永・アンジェロリトリコ
■取引先:約700名
■乾杯音頭:馬場彰 オンワード樫山社長
■万歳三唱:高野義雄 東京スタイル社長
◎1979年10月06日 黒崎そごうオープン
■福岡大学ブラスバンド(演奏・本年日本一)
■黒崎祇園山笠保存会(太鼓披露)
■ママさんコーラス(SOGOそごうへ行こうの歌)※GO GO そごう
■東京消防記念会第5区4番組(木遣り)
そごうグループ発展史のひと節(竣工開店披露宴における水島社長挨拶の一節)
黒崎そごうは、そごうグループ多店化構想の10店目の店であり、また、日本列島4島にすべて店を持つという百貨店業界初めての事業の達成でもあります。百貨店の一つの店舗は、網の一つの結び目といえます。黒崎そごうの開店によって、10の網の目がしっかり結ばれたわけですが、この網の目は多くなればなるほど丈夫になり、たとえ一つの目がゆるんでも、他の網の目がお互いに支えあって補ってくれます。したがって、企業の安定的発展と永続性のために多店舗化は不可欠です。その意味では、黒崎そごう開店は、そごうグループ発展史の一つの大きな節といえます。
水島廣雄そごう社長 竣工開店披露宴 挨拶全文(1979年10月3日)
屋上で開催された労使共催開店祝賀前夜祭(1979年10月2日)
YouTubeにアップしました(約36分)
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